昨年から現在まで、父の会社がランサムウェアのdeadboltの被害に遭ったことがきっかけで、父だけでなく日本中、世界中の被害者の方々のサポートを慈善事業として引き受けてきました。
身代金を支払ってでも復号したいと私に相談いただいた皆さんについては、ほぼ100%データの復旧に成功してきました。
中には、身代金を支払わずに復号キーを入手できた方もいました。その方は、幸運にも犯人の攻撃の途中で暗号化プロセスを切断できたのです。
ただし、その方は、復号用プログラムを犯人が仕込むのも阻止してしまったために、私が父の会社のNASから入手した犯人の復号プログラムを、その方のNASに移植するなどの処理が必要でした。
大半の相談者が、私のサポートに対して感謝の言葉と、精一杯の謝礼をくださいました。
しかし、中には、他のどこに相談しても無理だったことをやってのけた私のスキルを賞賛しながらも、犯人のビットコインアドレスに出金でき、復号キーを入手すると、パタリと連絡が途絶えた方もいました。日本人の相談者でした。
LINEの既読がつかなくなったので、多分ブロックされたのだと思います。
その方にとって、多分私は、犯人の仲間と同じような存在なのだろうと思います。
私は、その人に必要とされたサポートを提供することが、正義だと信じて、身代金の支払いを手伝ってきました。
しかし、こういうことがあると、元々メンタルがそれほど強くない私は、自分がしてきたことは本当に正義だったのだろうかと、疑いの気持ちが生じてしまい、塞ぎ込んでしまいそうになります。
人助けをすることには、自分の手助けが原因で、相手に感謝されるどころか、逆に憎まれるリスクを負う覚悟が必要です。
それでも、私が「慈善事業」であると信じて取り組んできたこのサポートが、正しいことであったと信じたいと思います。
私は、犯人に犯罪資金提供するために、身代金の支払いを手伝ってきた訳ではなく、被害者の大切なデータを復旧するお手伝いをするために、サポートしてきただけだからです。
謝礼金も強要したことは全くなく、被害者の方がお礼がしたいとおっしゃってくださった場合だけ、受け取ってきました。
復号できたかどうかについての結果を知らせもせずに音信不通になった方は、それで本当に幸せでいられるのだろうかが心配です。
そういう方は、殺伐とした世の中で、人との繋がりへの信頼を失ってしまっているように感じるからです。
私は、謝礼をいただけなかったことを気にしている訳ではなく、これだけ誠心誠意、サポートしてきた人間に、そのような態度がとれる人が存在するという事実に、震撼しているのです。
せめて、ファイルが復旧できたことお知らせいただき、簡単でもいいので一言お礼の言葉だけでもかけてくださったら、私はそれで満足なのです。
日本の将来は、彼らのような心を病んだ人を、救えるかどうかで決まるような気がします。
私は、自分がホワイトハッカーでありたいという理想への願望という幻想を抱いていることは自覚しているけれど、それでもやはり、本物のホワイトハッカーでありたいと思うのです。